8月の岸田内閣改造で河野太郎氏がデジタル大臣に就任しました。日本では一部の自民党議員を中心に、Web3を日本の成長戦略の柱に据えようという機運が高まっています。
その中で、河野デジタル大臣には大きな期待が寄せられています。自民党で「NFT特別担当」を務める平将明議員も、22年6月に「デジタル庁」がWeb3領域を管轄する方針を検討していることを明かしており、河野太郎デジタル大臣の誕生にも期待感を示しています。
このように様々な場面で耳にする機会が増えた「Web3」という言葉、果たしてどれくらいの日本人がこの言葉の意味を正しく理解しているのでしょうか。
この記事では「Web3でわたしたちの生活はどう変わるか?」という切り口でWeb3について解説します。まだ明確な定義さえ定まっていないWeb3という概念について、現時点での1つの解釈としてお読みいただければ幸いです。
Web3=新しいインターネットのあり方
Web3関連の技術には、ブロックチェーン、暗号資産、NFT、メタバースなどが含まれます。こうした技術の上位概念と言えるのがWeb3です。
約20年前に生まれた初期のインターネットであるWeb1、そして2010年代以降、GAFAなどの巨大テック企業を中心に形成されたWeb2。これらの流れを経て登場した「新しいインターネットのあり方」がWeb3です。
Web1、Web2とWeb3の違い
「Web3とは何か?」をはっきり定義することは難しく、そもそも明確に定義される日が来るかさえわかりません。しかし、Web1・Web2と比較することで、2022年現在におけるWeb3のおおよそのイメージはつかめます。そこでまずは、Web1から順にその特徴を理解していきましょう。
Web1
画像出典:Microsoft
Web1は一方通行のインターネットと言われています。イメージとしては、企業のホームページのように情報を一方的に伝えるだけのものです。この時代に覇権を握ったのは、Windowsを開発したMicrosoftでした。
Web2
画像出典:ASCII
Web2は双方向のインターネットと言われ、一言で表すなら「SNSの時代」です。TwitterやFacebook、Instagram、YouTubeなどのSNSを使って個人も自由に発信ができるようになり、ユーザー同士の相互のコミュニケーションも発生しました。
この時代を作ったのは今も世界の頂点に君臨するGAFAなどの米国巨大企業です。Web2の時代はこれらの企業に個人情報が集約し、その情報に基づいて人々の行動が企業によってコントロールされる「中央集権的な時代」とも言われています。
スマホの画面に自分の興味関心がある商品やサービスの広告ばかりが表示されるのは、こういった企業が個人情報をもとに個々人に最適化した広告を見せる仕組みを作っているためです。Web2は「個人が企業によって生かされ、手のひらの上で転がされた時代」であるとも言えます。
Web3
中央集権的だったWeb2のインターネットに風穴を開けるのがWeb3です。Web3は「分散化されたインターネット」「個人が真に所有できるインターネット」と言われています。
今すぐにGAFAのような企業がなくなることはありません。しかし、Web3の世界ではすでに彼らのような中央集権的企業を介さない「分散型」のサービスが誕生しつつあります。またWeb3の時代は、ブロックチェーンを用いることでお金(暗号資産)やデジタル資産(NFT)を真の意味で個人所有できる時代とも言えます。
では、Web3によって具体的にわたしたちの生活がどのように変わるかを見ていきましょう。
Web3がわたしたちの生活にもたらす変化
Web3のサービスが増えることで、わたしたちの生活には以下のような変化が生じます。
- 会員登録や個人情報の入力が不要になる
- Web上の経済活動を匿名で行えるようになる
- 手数料を取られる場面が減る(あるいは手数料の額が少なくなる)
会員登録や個人情報の入力が不要になる
Web3の経済活動では、各種サービスの利用開始時に会員登録をすることがなくなります。それに伴い、個人情報を入力する機会もなくなるでしょう。
現在、わたしたちがWebサービスを利用する際は、ほぼ確実に個人情報の入力および会員登録をする必要があります。しかし、Web3の世界ではこれがなくなります。なぜなら、Web3のインターネットでは「誰にも管理されないデジタルの個人の財布」を持つことができるためです。
わたしたちが現実世界で持っている財布とその中に入っている現金は、自分以外の他者の手で管理されることはありません。これと同じように、自分だけが管理できるデジタルの財布をインターネット上にも持つことができるようになります。
各種Webサービスを利用する時は、デジタルの財布をそのサービスのサイトに接続するだけで決済まで可能になるため、個々のサービスについて会員登録をする必要がなくなります。
Web上の経済活動を匿名で行えるようになる
会員登録をしないということはすなわち、個人情報をあかさずに匿名で経済活動ができることを意味します。Web2の世界ではあらゆる場面で個人情報の入力を求められましたが、考えてみればこれはおかしな話です。
現実世界の店舗で買い物をするとき、わたしたちはお店に自分の個人情報を逐一伝えるでしょうか。現実世界では自分が何者かを明かさずに買い物ができるのに、ネット上では必ず個人情報の入力を求められるのは違和感を覚えませんか?
Web3では、自分だけが管理するデジタル財布を持てるため、各種サービスの利用にあたっても匿名での利用が可能になります。
手数料を取られる場面が減る(あるいは手数料の額が少なくなる)
Web2のインターネット上でデジタル決済をする場合、わたしたちは各種クレジットカードや〇〇ペイのような電子決済手段を利用しています。ネット上で買い物をするとき、これらのサービスを利用する対価として一定の手数料が価格に上乗せされています。ところが、これもWeb3の世界ではなくなります。
個人の財布から商品やサービスの提供者に対してネット上で直接支払いができるようになるため、カード会社のような中間管理者を介する必要がありません。つまり、決済行為の途中で手数料を取られる場面がなくなります(あるいは手数料の額が少なくなります)。
個人を企業の管理から解放するWeb3
Web3は「個人を企業の管理から解放するインターネット」であるとも言えます。
Web2のインターネットは確かに便利な生活をわたしたちにもたらしました。その代わりに、わたしたちの個人情報は企業に管理され、購買活動を誘発する広告を見せられ、あらゆる場面で手数料を取られるといった形で搾取されてきました。しかし、Web3が浸透することによってこの仕組みが変わります。
このように考えると、Web3について今のうちから理解を深めておくことは、すべての現代人にとって重要な課題であると言えるのではないでしょうか。