分散型ブログプラットフォーム「Mirror(ミラー)」は、サブスクリプション機能を開始したことを2022年7月に発表しました。MirrorはWeb3時代の新しいブログサービスだと言われています。
今回発表されたサブスク機能に先立ち、2022年5月には「Writing NFT」と呼ばれる機能が実装されています。Writing NFTとは、クリエイターが自ら作成した文章をNFTとして発行し、供給量と価格を自由に設定できるサービスです。
「文章をNFT化して販売する」機能には、どのような価値があるのか理解しにくいかもしれません。
わたしたちはすでに「お金を払って文章を購入する仕組み」として、Amazonが提供するKindleのような電子書籍サービスなどを利用しています。しかし、電子書籍とNFT化された文章は根本的に性質が異なります。
どのような違いがあり、従来のサービスの何が問題なのか…。
この記事では既存の電子書籍とNFT化された文章を比較することで、Web3サービスの根幹となる考え方、及び、その考え方を実現する技術としてのNFTについて解説します。
Kindleが抱える問題点
画像出典:Amazon
Kindleなどの電子書籍はとても便利なサービスです。いまや本はすべて電子書籍で購入し、紙の本は買わないという人も少なくありません。
Kindleも「スマホ1つでいろいろな本が読める」「通常の本より価格が安い」など、紙の本に比べて様々なメリットがあります。
ところが実は、Kindle(他の電子書籍も含む)には重大な問題が隠れています。
Kindleの所有権は誰のもの?
それは「Kindleの所有権は誰にあるのか?」というものです。
多くの人はAmazonサイトで購入したKindleについて、何の疑いもなく自分のものだと思っているでしょう。
ですが実際は、わたしたちはKindleを真の意味で所有してはいないのです。
アカウントが消滅すればデータもなくなる
購入したKindleは、自分のスマホの中に保存されているように見えます。
ところが、これは過去に購入したKindle(=自分のAmazonアカウントに紐づいたデータ)が画面上に表示されているだけであり、書籍のデータがスマホ自体に保存されているわけではありません。
Amazonアカウントが凍結されたり、誤って削除されたりした場合、アカウントもろともKindleのデータはすべて消えてしまいます。
つまり購入したKindleのデータは、厳密にはわたしたちの所有物ではなくAmazonの所有物なのです。
Amazonの一存で、わたしたちは購入したはずのKindleを閲覧できなくなったり、最悪の場合はデータを消されたりする可能性もあります。
NFTは「個人が所有権を取り戻す手段」
画像出典:Mirror
一方、MirrorのWriting NFTのように「NFT化された文章」はまったく性質が異なります。
最近話題のNFTアートと同じく、NFT化された文章のデータは永久にブロックチェーンに刻まれます。これはすなわち、自分が購入したNFTの文章が第三者によって勝手に削除されることは無いことを意味しています。
また、その文章の所有者が自分自身であることもブロックチェーンによって証明されています。紙の本を購入した場合、その所有者は間違いなく本を買ったその人自身です。
NFTを用いることにより、デジタルの本のデータについても購入者自身の所有物としてブロックチェーンに刻まれ、永久に存在し続けることができます。
Web3時代のビジネスの形
Web2時代のサービス(特にサブスクリプション系)は、ユーザーが真の意味で所有権を持たないケースがほとんどでした。
Netflixで配信される映像、Spotifyで聴ける音楽、そしてKindle。いずれのコンテンツも自分の手元にデータがあるように見えて、実は真の所有権はサービスを提供する側にありました。
そして、この仕組みを根底から変えうる技術がNFTです。
動画、音楽、電子書籍、さらにアート作品など、様々なデータがNFTとしてブロックチェーンに記録されることで、それを購入したユーザー自身が本当の意味で自分のものとして所有できるようになります。
デジタルデータの所有権を企業から個人に取り戻せる世界。それこそが、NFTによって実現するWeb3時代のビジネスのあり方なのです。