2021年9月、中米のエルサルバドルが世界で初めてビットコインを法定通貨に採用しました。
法定通貨は「強制通用力」を有する通貨と定義されています。言い換えると、政府が認めている通貨のことを指します。
日本における円、アメリカにおける米ドルと同じ位置づけの通貨として、エルサルバドルではビットコインが採用され、実際に日常生活の中で用いられています。
そして2022年4月、中央アフリカ共和国もビットコインを法定通貨として採用しました。エルサルバドルに続き、世界で2カ国目です。今後、他の国でもビットコインを法定通貨として採用する動きは続くでしょう。
しかし、わたしたちの日常生活の中ではビットコインを含め、仮想通貨を利用する場面は多くありません。
ビットコインを法定通貨に採用した国があるという話を聞いても、「結局、仮想通貨って使いみちはないよね?」との反応を示す方も多いと思います。
この記事では、今回2カ国で法定通貨として認められたビットコインにこれから期待される役割について解説します。
ビットコインは意外と不便?
すでにビットコインを法定通貨に定めているエルサルバドルでは、日々の買い物の支払いにビットコインが使える場面はあるようです。
しかし、実はビットコインは決済などの日常生活で使うには不便さが残ります。
仮想通貨の基盤となるブロックチェーンという技術は、1分あたりに処理できる情報の量がブロックチェーンの種類ごとに決められています。
そしてビットコインのブロックチェーンは他のブロックチェーンと比較しても、1分あたりに処理できる情報の量は多くありません。
この問題を解決するために、ビットコインのブロックチェーンの処理能力を補完するLightning Network(ライトニング・ネットワーク)と呼ばれる技術の開発も進んでいます。しかし現時点では、まだビットコインの処理速度はそれほど速くありません。
つまり、ビットコインを日常生活で使うにはまだ「不便」なのです。
ビットコインの役割は「価値の保全」
通貨として使用するにはまだ不便なビットコイン。
しかし、今やビットコインは個人投資家の投機目的のみで売買される資産ではありません。事実、大口と呼ばれる機関投資家もビットコインに価値を認めて、多額のビットコインを購入しています。
機関投資家がいまビットコインを買い集めている理由、それは「価値の保全」機能を期待しているためです。
コロナ以降、法定通貨の価値に疑問が持たれ始めています。
日々の生活の中でそのような疑問を感じることはないかも知れません。しかし、実はコロナ対策として各国政府は法定通貨を大量に発行し、コロナで苦しむ経済を下支えしました。
この行為は諸刃の剣です。お金は流通量を増やすほど、価値が下がってしまうためです。
経済に詳しい人の目には、「コロナ対策とはいえ、国はこんなにも簡単にお金の発行量を増やすのか。これではいつの日か法定通貨の価値は下落し、円やドルは無価値な紙切れになってしまうかもしれない。」と映ります。
つまり、法定通貨で資産を持っていても、勝手に価値が下がってしまう可能性が出てきます。いま日本は円安が進んでおり、まさに「円の価値が勝手に下がっていく(=円で買い物をする時の値段が高くなる)」ことを実感している人も多いでしょう。
そこで、安全に価値を保全する資産としてビットコインが選ばれ始めています。
世界中が価値を認める「デジタルゴールド」
ビットコインは、今はまだ価格変動の激しい通貨ですが、価値自体は全世界共通で認められています。
エルサルバドルや中央アフリカがビットコインを法定通貨に採用したのも、国の信用で発行する通貨よりも、世界中に価値が認められているビットコインの方が信用度が高いと判断したためです。
日本のように比較的治安が良い国ではイメージがつかないかも知れませんが、政情が不安定な国であれば、自国通貨よりもビットコインの方が信頼できるということは起こります。
つまり、世界共通で価値が認められているビットコインこそが、最も安全に資産を保護する手段だと考えられるようになってきました。このため、ビットコインは同じく資産保全の手段として用いられるゴールドになぞらえて、「デジタルゴールド」と呼ばれています。
「日本円の価値が危うい」と叫ばれる時代になってきました。まだ価格変動は激しい資産ではありますが、ご自身の保有資産の一部にビットコインを入れることを真剣に考えるべき時が来たのかもしれません。