NFTの認知度が高まるにつれて、日本でも仮想通貨に関心を持つ人は増えています。
その一方で、今なお「仮想通貨=投資=危ない・怪しい」という印象を持っている人も少なくありません。仮想通貨にマイナスの印象を持っている人は、ブロックチェーンやNFT、DeFi、DAOなどの関連するテクノロジーについても懐疑的だったり、そもそも無関心だったりします。
投資という切り口だけを見れば確かに仮想通貨投資にはリスクがありますが、それは他の投資も同じです。
むしろ仮想通貨の本質は、基盤となるブロックチェーンの技術にあります。
この記事では、ブロックチェーンによって成り立つ「トークンエコノミー」と呼ばれる概念について事例を用いながら解説します。トークンエコノミーは単なる投資を超えてわたしたちの生活に浸透し、世界のあり方を変える可能性がある新しい経済の仕組みです。
最後までお読みいただければ、仮想通貨やブロックチェーンなどのテクノロジーが何のために存在し、どこに向かおうとしているのか、理解が深まるはずです。
Web3気象ネットワーク「WeatherXM」が500万ドルの資金を調達
画像出典:WeatherXM
先日、「Weather XM」という気象ネットワークが500万ドルの資金調達をしました。
Weather XMはユーザーに対するインセンティブとしてトークンを活用し、気象予測の精度を高めることを目指しています。
少しわかりにくいので、Weather XMが目指す経済モデルのポイントを列挙します。
- ユーザーはWeather XMが販売する気象予測装置を購入し、自宅に取り付ける
- 装置が集めた気象データをWeather XMに送る
- その見返りとしてトークン(≒仮想通貨)を受け取る
つまり、ユーザーはWeather XMの装置を買って取り付けて置くだけで、報酬として仮想通貨がもらえる仕組みになっています。
とても旨味のある話に聞こえますが、実際は装置購入のために約400ドル(約5万5000円)の出費が事前に必要です。
こういった仕組みはWeather XMの例だけではありません。ユーザーにあらかじめ商品を購入してもらったり、何らかの行動を起こしてもらった報酬としてトークンを付与するといった「トークンエコノミー」は、Web3関連のビジネスにおいて増えてきています。
これらのサービスは一体何を目指して生み出されたものなのでしょうか。
既存の経済の仕組みでは解決できない問題とは?
トークンエコノミーが誕生した理由の1つは「既存の経済の仕組みでは解決できない問題を、トークンエコノミーは解決し得る」からです。
先ほどのWeather XMの例で説明します。
Weather XMの装置で気象データを集めた結果、実現できることは「気象予報の精度を上げること」です。しかし一般的には、気象予報はすでに十分な精度に達しており、これ以上改善する余地があるのだろうかというのが普通の感覚でしょう。
ところが、ある条件下では必ずしもそうではありません。
現在、精度の高い気象予報を提供できるのは「気象インフラが十分に整備されている地域のみ」です。つまり、僻地や人口の少ない地域など採算が取れる見込みがないケースでは、インフラが整っておらず、気象データが集まらないため正確な気象予報が提供できません。
そしてWeather XMのモデルこそが、この状況を改善する一手になり得ます。
「採算の問題で政府や企業が手を差し伸べることができないのであれば、その地域の住民が自ら気象データの収集に協力すればいいじゃないか。協力してくれたら、それに見合った報酬はトークンとして支払うから。そのうえ、地域の気象予測も正確になるから、損することは何もないよ」というのが、Weather XMが提供するトークンエコノミーです。
既存の経済モデルの合理性に従うと、どうしても政府や企業の手が届かない部分が出てきます。
これに対して、ユーザーの貢献に対する報酬をトークンで支払い、さらにそれ以外の価値(上記の例では「正確な気象予測」)も提供する仕組みは、今よりも遥かに高度な利便性を世の中に提供できる可能性があります。
このように仮想通貨やブロックチェーンなどのテクノロジーは、単なる投資対象にとどまりません。今の世の中の仕組みでは解決が困難な課題に対して、有効な一手を繰り出すための新しい技術なのです。