ZOZOTOWNを設立した起業家、前澤友作氏が「MZDAO」というコミュニティを立ち上げたことが話題になりました。DAO(Decentralized Autonomous Organization)は自律分散型組織と呼ばれるもので、Web3時代の新しい組織形態として注目を集めている概念です。
NFTやメタバースと共にWeb3を語る際の主要キーワードとして、メディアで見かけることも増えてきました。ですが、ブロックチェーンやNFTのように定義が明確な技術とは異なり、DAOは具体的な技術や手法を指すものではなく、概念もまだ曖昧です。
この記事では2022年現在におけるDAO像について、「DAOに必須とされる要素」として4つの視点から解説します。
DAOに必須とされる要素
以下の内容は「DAOの定義」として解説したいところですが、DAOはまだ確固たる定義がありません。
DAOについて語る人それぞれが、異なるDAO像を持っていることもよくあります。
したがってここでは普遍的な定義ではなく、あくまで多少の議論が進んできた「2022年時点でのDAOの定義」という認識で読み進めていただければと思います。
DAOにほぼ必須と考えられる要素は以下の通りです。
- 社長がいないこと
- 誰でも匿名で参加できること
- スマートコントラクトで動くこと
- ガバナンストークンがあること
この4つについて、順に解説していきます。
なお、DAOは生まれたばかりの概念であるため、DAOと名乗っているすべてのコミュニティがこれらの要素を兼ね備えているとは限りません。
社長がいないこと
DAOは多くの人々が集まる組織ですが、同じく組織の一形態である株式会社とは大きく仕組みが異なります。
その違いの1つは、社長が存在しないことです。一般的な会社は、社長をトップとしたピラミッド構造で組織が作られています。
ところが、DAOには社長にあたる人がいません。
最初にDAOを作った「創設者」は存在しますが、DAO内の活動はその創設者の意思決定で動くわけではなく、参加するメンバー各々が適宜意思決定を下してプロジェクトを進めることができます。
誰でも匿名で参加できること
会社に限らず、学校や習い事、地域のコミュニティなど何らかの組織に所属する際、わたしたちは当たり前のように自身の個人情報を提示しています。匿名で入社できる企業というのは聞いたことがありません。
しかし、DAOは匿名で参加できる組織です。
DAOは「人種・性別・年齢・居住地・氏名」など、あらゆる個人情報を登録することなく参加できます。
まったく素性のわからない人たちと共にプロジェクトを進めるわけですが、それでもきちんと報酬を得ることができます。
画像出典:NinjaDAO
こちらは、日本はおろか世界でも最大級の規模を誇るNFTコミュニティ「NinjaDAO」でのやりとりです。多くのDAOでは、「Discord」と呼ばれるチャットツールを用いてコミュニケーションを取っています。
このNinjaDAOのDiscordに参加しているメンバーの名前が画面の右端に並んでいますが、誰も本名で登録することなく、顔出しもしていません。自分で設定した名前とアイコンの画像のみでコミュニケーションが成立する世界。
それがDAOなのです。
スマートコントラクトで動くこと
これが実装されているDAOはまだかなり少ないと言われていますが、スマートコントラクトで動くこともDAOの重要な要素とされています。
スマートコントラクトとは、「定められた条件を満たすことにより、ブロックチェーン上で自動的に契約が執行される仕組み」のことです。
一般的な会社において、社員の給料を支払うときは給与担当者が「振り込み」という行為を行うことで支払いが遂行されます。
振り込み自体は毎月自動で行われるかもしれませんが、もし数日間会社を休んだ社員がいれば、その分だけ給与から差し引かなければなりません。
こうした例外的な動きも含め、多くの意思決定は人間によって行われ、人間が行動することで最後まで遂行されます。
ところがスマートコントラクトを用いることで、この状況は一変するんだ。
例えば、社員が出社時・退社時にタイムカードを切った場合、スマートコントラクトによって自動的に働いた時間分の給与を支払うことができます。「◯時間働いた」という事実がトリガー(引き金)となり、自動的に支払いが行われるイメージです。
これは時給労働に限った話ではなく、たとえば自分が制作したWebデザインを納品したら、「納品した」という事実をトリガーとして報酬の支払いを受けることもできます。DAOの活動においては、あらゆる動きがスマートコントラクトを用いて自動化していくことが予想されています。
ガバナンストークンがあること
ガバナンストークンとは、わかりやすく言えば「コニュニティの運営方針を決めるために用いる暗号資産」です。
株式会社では、会社の方針を決めるのは株主です。そして保有している株式が多ければ多いほど、発言権も強くなります。
DAOではこれと似たような仕組みをトークンを用いることで形成しており、その際に用いられるトークンをガバナンストークンと呼びます。
このガバナンストークンは暗号資産取引所で売買可能なことも多く、その場合は誰でもガバナンストークンを入手し、運営方針の決定に際して投票することができます。
DAOは利益を追求する組織なのか?
ここまでの内容を見ると、DAOは既存の会社組織とはかなり異なる存在であることがわかります。そして、多くの人が「これだとビジネスとして儲からないんじゃないの?」という印象を持つかもしれません。
実は、DAOは会社のような「営利組織」とは言えない側面があります。
たとえば、さきほど例で挙げたNinjaDAOの場合を見てみましょう。
NinjaDAOはインフルエンサーのイケハヤ氏が立ち上げた組織ですが、創設者のイケハヤ氏自身はNinjaDAOという組織自体からは1円も報酬を受け取っていません。
つまり、DAOは「創設者が儲けるための営利組織ではない」ということになります。
また、NinjaDAOから生まれたプロジェクトで有名なものに、日本トップのNFTコレクションとなった「CryptoNinja Partners(CNP)」があります。CNPは確かにNinjaDAOから生まれたプロジェクトですが、事業としてはNinjaDAOのものではなく株式会社バケットのものです。
その売上はNinjaDAOではなく、バケット社に入ります。
つまりDAOは「興味関心が似通った人が集まる中で、自由に経済活動を発足させることができる場」であると言えます。
本記事の内容は、まだ生まれて間もないDAOという概念について解説したものですが、2022年現在のDAOを理解するにあたっては知っておいて損はない知識です。
多くのDAOは誰でも自由に参加できるようになっていますので、興味が持てるDAOがあれば、ぜひ気軽にDiscordをのぞいてみてください。