ブロックチェーンの透明性とは?悪人が善人になる世界がやってくる

先日、7年以上に渡り休眠状態だった約140億円相当のビットコインが移動したというニュースがありました。

暗号資産ウォレットは、ウォレットの持ち主以外が資産の移動・管理をすることは不可能という特性があります。そのため、持ち主が亡くなったウォレットはその後、永久に資産の移動が起こらないまま放置されることが起こります。

大量のビットコインの移動が見つかる度にニュースになるのは、市場に対する影響の大きさに加え、「動かないと思っていたものが急に動いた」という驚きもあるからです。

では、持ち主以外が管理できないはずのウォレットに入っているビットコインの動きが、このように明るみに出てくるのはなぜなのでしょうか。

実は、ブロックチェーン上にある暗号資産ウォレットは「世界中の人に中身が公開されているお財布」だと言えます。あなたが購入した暗号資産やNFTの保有額も、すべて世の中に対して公開されているのです。

ブロックチェーンが持つこの「透明性」という性質は、世の中の仕組みを大きく変える可能性があります。

この記事では、ブロックチェーンの透明性とそれがもたらす社会の仕組みの変化について解説します。

お金の流れは見えないのが当たり前だった

ブロックチェーンの透明性について考える前に、今の私たちの経済活動におけるお金の流れについて考えてみましょう。

今の世の中は、資本主義・株式会社という仕組みで成り立っています。

企業は商品やサービスを販売し、私たち消費者はお金を払ってそれらを購入・消費します。そのお金は企業の売上となり、新たな商品開発に用いられることもあれば、従業員に対する報酬や株主への配当としても分配されます。

しかしこの資金の流れにおいては、一度企業の手に渡ったお金がどのように使われているかを私たち消費者は知る術がありません。

もちろん企業は投資家や消費者に対して、自社の売上やその用途について正しく公開する義務はあります。ですが、その情報はあくまで企業側から発信されたものであるため、一切の粉飾等がないとは言い切れません。

事実として、有名企業が実績を水増ししていたなどという報道は度々起こります。

つまり、資本主義経済におけるお金の流れは「実は限りなく不透明」だったことがわかります。

これは商業活動に限りません。募金や寄付、その他慈善活動によって集まったお金などの使途についても同様です。

私たちがスーパーやコンビニで募金したお金は本来の目的のために正しく使われているのか。そのことを私たちは「一切の嘘偽りがない」というクリアなレベルで確認することができないのです。

この状況は、果たして健全な状態と言えるのでしょうか。

ブロックチェーン上のお金の流れはすべて見える

ブロックチェーンの持つ透明性は、もとを正すとこのような資本主義経済の不透明性に疑問を持つところから生まれたと言えます。

冒頭で述べた大量のビットコインの移動は、特殊な情報網を持っている人だけが入手できる極秘情報ではありません。

ビットコインのブロックチェーンに刻まれた取引の履歴を見ればわかることであり、そしてインターネットに接続さえできれば誰でもその事実を確認することができます。

これはビットコインに限らず、他のブロックチェーンも同様です。

たとえば、NFTマーケットプレイスのOpenSeaであなたがNFTを購入した履歴は、OpenSeaにアクセスしているユーザー全員が確認することができます。これは、あなたが「公開・非公開」のような設定をするまでもなく全世界に対して公開されているものであり、非公開にするという発想がそもそもありません。

そしてこの仕組みは、今の経済システムに比べて圧倒的な透明性をもたらします。

ブロックチェーンを用いた取引では、「企業がどの商品をいくら売り上げたか」「その売上を何に使ったか」といった情報から、「寄付でいくら集まったか」「そのお金は何に使われたか」ということまで、すべてが筒抜けになっています。つまり、企業や団体は一切の嘘がつけなくなります。

悪人が善人にならざるを得ない世界

ブロックチェーンを活用した取引はまだ一般的ではありません。

ですが、NFTの取引などではすでに「NFT販売で大きな資金を調達した運営サイドは、その資金を結局何に使ったのか」を確認する目的で、ブロックチェーンの持つ透明性は活かされています。

このようにブロックチェーンがもたらすのは「嘘をつけない、悪いことができない世界」です。

これまでの社会も基本的には悪事を働く者は罰せられ、正しく事業活動を行う企業や個人が成功を収める世界でした。

しかしそこには「悪いことをしたら罰を受ける」というルールがまず存在し、ゆえに誰も悪いことをしなかった・できなかったという構造があります。

つまり、もし罰せられないのであれば多少悪事を働いても構わないと考える人も存在しました。

一方、ブロックチェーンを基盤とした仕組みが構築されると「最初からすべての取引が公開されているから、悪事の働きようがない」という世界になります。

「自分の資産がすべて公開されているなんて気持ち悪い」というように、今はまだブロックチェーンの透明性に違和感を覚える人が多いかもしれません。

しかしブロックチェーンの透明性のおかげで、世の中は「悪いことをするほど損をする」「悪人が自然といなくなり、善人に変わっていく」という方向に進んでいきます。

ブロックチェーンや暗号資産はただの投資対象ではなく、社会の仕組みを根本から変えうる技術であることがおわかりいただければ幸いです。