高すぎ?安すぎ?NFTアート価格設定の裏事情

エヌエフティーアート_価格設定

日本国内でも多数のNFTプロジェクトが続々とリリースしています。

かつて日本でNFTが話題になり始めた頃は、そもそも出品数が極めて少なく、NFTを買おうにも好きなデザインの作品がまったく見つからない状態でした。

当時に比べると、日本人の感性を捉えた「日本人好み」のNFTもだいぶ増え、NFTマーケットプレイスを眺めるとお気に入りのNFTを見つけることは難しくなくなりました。

ところが、購入できるNFTの選択肢が増えるにつれ、ある疑問が浮かび上がるようにもなりました。
それは「NFTの価格設定って、どれくらいの水準が妥当なのだろうか?」というものです。

あるNFTプロジェクトでは0.001ETH、つまり設定可能な価格の最下限で初期販売をしている一方、他のプロジェクトでは0.4ETHと非常に強気の価格設定をしているものもあります。この両者だけを比較してもその差は400倍です。

一体なぜ、NFTの価格はこのように差があるのでしょうか。

この記事では、NFTの価格設定の裏側にある売り手の狙いを明らかにした上で、買い手としてはどのような判断軸でNFTを選ぶべきかを解説します。

価格設定が真逆のNFTプロジェクト「暴走東京」と「CNP」

NFTによって販売価格に差があることを示す実例を見てみましょう。

ちなみにここでは海外の超高額なNFTではなく、日本発のNFTプロジェクトを取り上げます。NFT初心者でも手が届く価格帯の作品の方が、現実味がありますからね。

暴走東京

画像出典:暴走東京

まず、高額なNFTの例は「暴走東京」です。

暴走東京は「暴走族カルチャー×サイバーSF」の世界観で描かれた作品です。ジェネラティブNFTと呼ばれる、発行数が非常に多いNFTコレクションになっています。

先日、販売価格が公表されましたが、衝撃の価格でした。

ジェネラティブNFTは、プレセールと呼ばれる優先販売をまず実施し、その後でパブリックセールという一般販売を行うことがよくあります。

暴走東京はプレセールの価格が0.4ETH(本記事の執筆時点で約9万円)、発行点数は2,500体。つまり、完売すれば約2億円の売上になります。

パブリックセールはさらに高額です。ダッチオークション形式(高めの価格から売り手が下げていき、買い注文が入った価格で売買成立)で6,500体を販売しますが、その価格はなんと0.6〜1.2ETH(約13〜27万円)と非常に高額です。完売すれば8〜16億円の売上になります。

プレセールとパブリックセールを合わせると10〜18億円もの売上になります。

CNP(CryptoNinja Partners)

画像出典:CryptoNinja Partners

次に、安価なNFTの例は「CNP」です。

CNPはインフルエンサーのイケハヤ氏とデザイナーのRii2氏が立ち上げたNFTプロジェクト「CryptoNinja」から生まれた二次創作のNFTです。発行数は22,222体と、世界的に見てもかなり数が多いジェネラティブNFTだと言えます。

CNPはすでにリリース済みですが、こちらの販売価格も衝撃的です。

CNPはリリース前からすでに人気が高く、プレセールで22,222体が完売しましたが、1体の価格はわずか0.001ETH(当時のレートで約250円)でした。売上は約550万円で、暴走東京とは比べ物になりません。

この事実だけを見ると、NFT初心者の方はこんな風に思うかもしれません。

「0.4ETHの暴走東京に比べたら、0.001ETHの値段しかつかないCNPって本当に価値があるの?」

「そう思いつつも、0.4ETH(9万円)のNFTなんてとてもじゃないけど買えないから、結局手が届く価格のCNPを買うしかないけどさ。なんでNFTってこんな価格付けになっているの?」

この疑問に対する答えは、NFT販売の目的を考えると見えてきます。

NFTを売ることは「資金調達の手段」

暴走東京とCNPに共通しているのは、「売って終わり」のNFTではないという点です。

暴走東京はメタバースでのコミュニティ作りやリアルなイベントの実施も考えているようです。CNPは、そもそもCNP自体が二次創作活動の結果生まれた作品であり、今後もCNPと紐付いたアニメやアプリなどの開発を予定しています。

つまり、NFTの販売は今後の事業のための「資金調達」という側面が強く、優良なジェネラティブNFTであれば概ね共通して持っている考え方です。

そして初期販売価格に大きく差があるのは、暴走東京とCNPの資金調達に対する考え方が異なるためです。

暴走東京は初期販売で一気に資金を調達することを狙っています。最大で18億円程度の売上がいきなり入るわけですから、その後の事業展開は非常に楽になります。

一方のCNPは、二次流通市場での取引を活性化させて、転売時の手数料で稼ぐことを狙っています。

CNPは当初から「NFT初心者が初めて手にするNFT」を目指していたこともあり、初期セールスで大きく資金を調達することは考えていませんでした。その代わり、二次流通では今も活発に取引されています。その証拠に、OpenSeaの総取引高ランキングでは一時的に世界9位を記録。また、国内のNFTコレクションの時価総額ランキングではリリース当初から今もなお圧倒的な1位を保持しています。

このように、NFTの販売価格を決めている要因の1つは「売り手がどのように資金調達をしたいと考えているか」であると言えます。

NFTを購入する時の判断軸は?

NFTの初期の販売価格は、売り手側の事情が大きく影響します。買い手である私たちは、その点はあまり深く考える必要はないでしょう。

では実際にNFTを購入する際は、何を判断基準とすればよいのでしょうか。

1つは、シンプルに自分の予算内で楽しめばOKということです。

暴走東京の約9万円という価格は、初めてNFTを買う人にはかなり大きなハードルでしょう。

一方のCNPは最初の価格はたったの250円です(ちなみに現在は価格が高騰し、二次市場では約9万円で取引されています)。250円のNFTならば、仮に価格が下落しても金銭的にはおそらく痛くないはずです。

NFTは価格変動が生ずる商品ですから、あくまで自分の懐が痛まない範囲で購入するのがよいでしょう。

もう1つは、そのNFTを保有することで得られるメリットは何かということです。

暴走東京はNFTを持っていることで、専用のメタバース空間に入ることができたり、現実世界のイベントに参加できたりするようです。

CNPは、CNPホルダーのみのコミュニティに参加できる他、CNPから生まれた二次創作のNFTプロジェクトのホワイトリスト(優先購入権)がもらえるなどのメリットがあります。

このように、NFTを買う際は無理に背伸びをして高額なものを買う必要はありません。あくまで自分の予算の範囲内で、自分が楽しめそうなNFTを探しながら、購入するNFTを選んでみてください。