『キャプテン翼』と「The Sandbox」の提携に見るメタバースの未来

翼₋サンドボックス

「ボールは友達」が信条のサッカー少年・大空翼の活躍と成長を描いたサッカー漫画『キャプテン翼』は、全世界でのシリーズ累計発行部数が8000万部を突破した大ヒット作です。

そのキャプテン翼が、こちらも世界的に知られているブロックチェーンゲーム「The Sandbox」と提携することが発表されました。

The Sandboxは、立方体を組み合わせて作られた「ボクセルアート」と呼ばれる作品で構成されるメタバース空間を舞台に、ゲームで遊んだりイベントを楽しんだりできるプラットフォームです。そしてメタバースは、Web3関連の技術の中でも大きく成長が期待される領域の1つでもあります。

この記事では、『キャプテン翼』とThe Sandboxの提携について現時点で判明している内容も踏まえて、これからメタバースで実現できることや、そもそも「メタバースとは何なのか」という疑問について考察していきます。

『キャプテン翼』と「The Sandbox」の提携内容

画像出典:PR TIMES

The Sandboxはイーサリアムブロックチェーンの上に構築されたメタバースプラットフォームです。ユーザーは仮想空間内でLANDと呼ばれる土地を購入・レンタルし、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成できます。既存のゲームの中では『Minecraft(マインクラフト)』と非常に似たプラットフォームです。

さらにユーザーは、所有するLANDやアイテム、キャラクターをイーサリアムブロックチェーン上でNFTとして自由に売買することができます。

提携後に予定されている事業は、具体的には以下のようなものになるとのことです。

  • LANDを活用して「キャプテン翼LAND」の開発を進める。
  • メタバース内にサッカー場などの施設を作る。
  • 大空翼をはじめとした漫画のキャラクターのNFTを販売する。

The Sandboxでは「LANDと呼ばれる土地を活用して、どのようなサービスを作るか?」が重要です。日本企業ではスクウェア・エニックスやエイベックスといった大手企業がすでにThe Sandboxの土地を購入しています。これらの企業がThe Sandbox上でどのようなサービスを作り上げるか、いま非常に注目が集まっています。

そもそもメタバースとは何なのか?

最近ではメタバース関連書籍の数も急速に増え、メタバースを扱うビジネスの広告も頻繁に見るようになりました。

しかし、Web3やメタバースに馴染みのない方の中には「メタバース=仮想空間」という漠然としたイメージはあるものの、なぜここまで騒がれているのか理解できない人も多いでしょう。

そこでここからは、現時点で考えられる「メタバースの定義」の候補をいくつか取り上げます。その上で、なぜ多くの企業がこぞってメタバース関連のビジネスに参入するのか、これからメタバースを利用してどのようなビジネスが生まれるのかを考えてみましょう。

メタバースの定義はまだ明確ではありませんが、現時点で考えられるものとして以下の3点があります。

  • 仮想空間・仮想現実などのバーチャルな空間
  • NFTや暗号資産を伴った経済圏
  • Meta社のOculus Questの中で広がる空間

1.仮想空間・仮想現実などのバーチャルな空間

1つめは、「バーチャルな空間さえあればそれはすでにメタバース」という考え方です。

この考え方に従うなら、すでにわたしたちは様々な場面でメタバースに触れていることになります。例えば、日本の人気シミュレーションゲーム「どうぶつの森」などが該当します。

オンライン・オフラインを問わず、また1人で遊ぶのか他人と一緒に遊ぶのかを問わず、昨今のゲームの多くはメタバースと呼んでも差し支えない仮想空間的な要素を持っているものが多いのではないでしょうか。

2.NFTや暗号資産を伴った経済圏

2つめは、「NFTや暗号資産を伴った経済圏こそがメタバース」という考え方です。

1つめの仮想空間=メタバースという考え方のもとでは、ゲームの中でアイテムや土地の売買等が行われたとしても、そこに現実のお金が絡んでいく要素はありません。

ところが、The Sandboxのようなブロックチェーンゲームでは事情が異なります。The Sandboxの中で取引されるアイテムや土地の売買に用いられるのは暗号資産、つまり現実のお金です。アイテムや土地自体もNFT(=金銭的価値が認められるもの)として扱われています。

これはつまり、「暗号資産やNFTの形で現実のお金が絡むことにより生み出された経済圏こそがメタバース」という考え方です。そしてこれをチャンスと見た企業が次々と参入してきたことが、最近のメタバース界隈の盛り上がりの背景にあります。

3.Meta社のOculus Questの中で広がる空間

3つめは、「Meta社のOculus Questを利用して入れる空間だけがメタバース」という考え方です。

2021年、マーク・ザッカーバーグ氏率いるFacebookは社名をMetaに変更しました。メタバースのMetaです。このことからも分かる通りMeta社は現在、メタバース事業に本腰を入れて取り組んでいます。

そのMeta社が販売しているVRヘッドセットがOculus Quest(オキュラスクエスト)です。Oculus Questを装着すると、まるで自分が本当にバーチャル空間の中に入ったかのような体験ができます。

一企業の作った製品を利用して入れる空間だけをメタバースと定義するのは、いささか無茶な気もします。しかし、Googleを利用して検索することを「ググる」と呼び、英語でもgoogleという単語に「Googleで検索する」という動詞の意味が当てられたくらいです。Meta社の製品を使って繰り広げられる仮想空間だけがメタバースであるという定義がなされる可能性も、決して無いとは言い切れません。

新しいテクノロジーに触れることがメタバースを理解する近道

今は言葉だけが独り歩きしている感もあるメタバース。しかし、暗号資産やNFT、Oculus Questのような新しい技術に今のうちから触れておくことは、メタバースを理解するために必ず役に立つはずです。

メタバースの未来に興味が湧いた方は、ぜひ暗号資産やNFTを買ったり、VRヘッドセットでゲームをプレイしたりするなどの新しい体験に挑戦してみてください。