ロイヤリティ0%問題とは?NFTを買って楽しむ私たちへの影響はある?

コラム-ロイヤリティ

世界最大規模のNFTマーケットプレイスOpenSeaが、クリエイター手数料(ロイヤリティ)をオンチェーンで執行するためのツールを発表しました。

これによりクリエイターはNFTを販売した際に得られるロイヤリティの割合を自分自身で決められようになります。

その反面、NFTを購入する側はNFT購入時にその設定されたロイヤリティを支払う必要があります。

今回OpenSeaがこのような動きを見せる前から、NFT販売時のロイヤリティをゼロにするNFTマーケットプレイスも現れ始めていました。

普段、NFTを買って楽しんでいる人にはあまり縁がない側面もあるロイヤリティですが、実はNFTを制作しているクリエイターにとっては死活問題です。

この記事では、NFT販売におけるロイヤリティが果たしている役割、そして私たちNFTの買い手には具体的にどのような影響があるかについて解説します。

NFT販売におけるロイヤリティとは?

出典:OpenSea

NFT販売におけるロイヤリティとは、2次流通市場でNFTの転売が発生した際に、売買代金の一定割合をNFTクリエイターに還元する仕組みです。

この仕組みによって、NFTクリエイターはNFTの一次セールスの販売額に加えて、2次流通市場で転売が発生するたびに継続的な収入を得ることができます。

クライアントワークを中心に働いているクリエイターの「薄給問題」は日本でよく取り沙汰されます。

NFT販売におけるロイヤリティはこの問題を解決できる1つの手段として、日本でNFTが盛り上がり始めた当初から注目を集めた要素でした。

ロイヤリティ0%を望んでいるのは誰か?

しかし今、このロイヤリティをゼロにするNFTマーケットプレイスが増えています。

これは「ロイヤリティ0%」を望んでいる人たちがいるためです。

では一体、どのような人たちがロイヤリティをゼロにすることを望んでいるのでしょうか。

ロイヤリティ0%を望んでいるのは「NFT売買の短期トレーダー」たちです。

規模で世界最大を誇ってきたOpenSeaの場合、ロイヤリティはNFTの転売が起こった際に、NFTを「売る側」が支払うことになっていました。

例えば、ロイヤリティ=10%に設定されたNFTを10ETHで売却した場合を考えます。

OpenSeaに支払う手数料2.5%、クリエイターに支払うロイヤリティ10%を10ETHから差し引いた残りの8.75ETHが自分の手元に入ります。

つまり、OpenSeaにおけるロイヤリティは「自分がNFTを売却するたびに」発生する仕組みになっていました。

これはNFTの売買を頻繁に繰り返す短期トレーダー勢には厄介な要素です。

短いスパンでNFTの売買を繰り返す彼らにとって、NFT売却時に必ずロイヤリティを支払わされるのは大きなコスト増加の要因になるからです。

そこで彼らの多くが「ロイヤリティを0%にせよ」を叫び始めたことで、NFTマーケットプレイスはロイヤリティをどのように設定するかという大きな選択を迫られるようになりました。

NFTマーケットプレイスとNFTクリエイター双方の対応

出典:Blur

ロイヤリティ0%を求める声によって影響を受けるのは、NFTマーケットプレイスとNFTクリエイターです。

まず、NFTマーケットプレイスが取った動きを見てみましょう。

多くのマーケットプレイスは短期トレーダーらの圧力を受け、次々にロイヤリティをゼロにしました。

MagicEdenやLooksRareのような主要マーケットプレイスがロイヤリティをゼロとする中、新しくローンチされ人気となっているBlurは、最初からロイヤリティ0%という仕様になっています。

ところが、このようなマーケットプレイスはNFTを作る側のクリエイターにとって魅力的には映りません。

これまでは転売が発生するたびに得ることができたロイヤリティが発生しないためです。

したがって、ロイヤリティをゼロにする動きがより本格化すれば、人気のあるクリエイターほどロイヤリティ0%のマーケットプレイスで自分の作品を出品しなくなると考えられます。

その結果、ロイヤリティ0%のマーケットプレイスには短期トレーダーばかりが残り、逆に人気のクリエイターは姿を消すという状態になりかねません。

一方、ロイヤリティを設定しているマーケットプレイスには腕のよいクリエイターが集まります。

そういったマーケットプレイスでは「ロイヤリティが発生する=NFTの売買を行う側が支払うお金が増える」ことになりますが、人気のクリエイターの場合、そもそも作品を購入するのはクリエイターのファンであることが多いため、ロイヤリティは「クリエイターに対する応援」という意味を持つことになります。

したがって、短期トレーダーのようにロイヤリティの支払いを嫌うことがほとんどなく、むしろクリエイターを支援するために喜んでロイヤリティを支払うような人たちが今後は集まっていくと考えられます。

NFTを買う側の私たちはどうすべきか

ロイヤリティ0%のマーケットプレイスを使うべきか、ロイヤリティの支払いが生ずるマーケットプレイスを使うべきか。

NFTの買い手である私たちはこの選択をしなければならないわけですが、もう答えは見えているはずです。

応援といった要素を考えず、ドライな短期売買をしたい場合はロイヤリティ0%のマーケットプレイスを選ぶのが賢い選択であると言えます。

人間味はない感じがしますが、そういった短期トレーダー勢が一定数いる以上は、こういった市場が形成されること自体は悪だとは言えません。

一方、お気に入りのクリエイターやNFTコレクションがあり、応援の気持ちを持って作品を売買するのであれば、ロイヤリティが発生するマーケットプレイスを選ぶことになります。

こちらの市場では今後より多くの人が、NFTを購入した後も長い目線で保有し続けるような文化が生まれる可能性があります。

NFTの楽しみ方自体は人それぞれであり、正解はありません。

自分の考えに適したマーケットプレイスを選んで、NFTの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。